森靖孝さんを偲んで

 森さんほどダンディという言葉が似合った方を私は知らない。外見も恰好良かったが、それよりも、人間の内面から湧きおこる人間としての魅力が、老若男女を魅了した。優しさ、強さ、ビジョン、謙虚さ、細かな配慮などに惹かれて森さんの周りに多くの人間が集まって、さまざまなことが実現していった。


 個人的には2003年にアントルプレナーシップの取り組みをやるということで、KBSからSFCに義塾内移籍する際に森さんと知己を得た。SFCフォーラムでキャンパスを支援してきて下さっていた森さんが、移籍とほぼ同時にメンター三田会を立ち上げて下さった。そのころ大学院に在籍していた牧兼充君と一緒に立ち上げたSIV研究プロジェクト、そして一足先2001年にベンチャーへ投資の核となるべく松本孝利さんが立ち上げて下さったMMIPと、三者が連携するコミュニティが形成された。以降、大学発ベンチャー、特にSFC学生を主体とするベンチャーコミュニティの育成にメンター三田会が果たしてきた役割は絶大だった。組織設計から運営まで森さんのビジョンとお力によって、数多くのベンチャーが育っていくこととなった。たとえばメンター三田会は三田会を称しながら塾員以外にも門戸を開いているほか、支援の対象も幅広くされている。今でも活力の源泉となっているこれらの仕組みはほぼ森さんプロデュースと承知している。


 今や大成功しているベンチャー経営者で、若気の至りのころから森さんやメンター三田会にお世話になっている方が数限りなくいる。成功したものだけでなく、途中でいろいろな挫折したり、悩んだりする学生にも、包容力ある優しさで接して人生全体をサポートして下さった。必然的に勃発するトラブルや諍いにも飄々と対応して下さった。その教育者としての温かい視線に、皆が勇気づけられてきた。


 大学の中で私が取り組んだアントルプレナーシップ教育や研究にも、非常に熱心に参加してくださり、合宿などにも参加して下さったのも貴重な思い出だ。何より学生や研究者の大いなる刺激を与えて下さった。折々に資生堂の海外展開の体験談を皆で聞いたことを鮮烈に記憶している。そんなお姿を見て、慶應義塾の定年年齢になる前にぜひ教員としても参画していただきたいと願って、特任教授までお願いしてしまった。森さんにとってもその時の体験が人生の良い思い出として下さっているという私宛のお言葉を、お亡くなりになる直前に宮地さんに託して下さったと聞いた。思わず涙が出てきてしまった。良い思い出をたくさんいただけたのは学生や私たちです、森さん。

 

 優しいだけでなく、體育會でつちかった不屈の強い意志をお持ちだった森さん。長かった闘病生活をしながらも、折々に顔を出して下さって明るい顔で激励を続けて下さった。恐らくとても苦しかったのではないかと思います。お志を深く心に刻み引き継ぐことを誓いながら安らかにお休みくださるようにお祈りします。本当にありがとうございました。

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