社会課題解決に貢献する投資をしたい
大竹 遼さん
株式会社慶應イノベーション・イニシアティブ プリンシパル
メンター三田会会員
経歴・キャリア
慶應義塾大学総合政策学部卒業。楽天に入社後、新規事業の立ち上げやマーケティング戦略企画などを担当した後、コーポレートベンチャーキャピタルである楽天キャピタルに所属。スタートアップ数社へのマイノリティ出資やM&A、事業連携等バリューアップを実行。また、アクセラレータープログラムや社内事業創出プログラムの立ち上げ・実行も経験。
「社会課題の解決に貢献する投資をしたい」と、2021年株式会社慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)に参画。デジタル・テクノロジー領域への出資を担当。
ITビジネスへの興味から慶應義塾大学SFCへ
元々実家がライブハウスで、身の回りの大人たちの多くがプロのミュージシャンだったということもあって、自然な流れでその道を目指していました。ただ、キャリアを真剣に考え始めた中高生のころに、ミュージシャンで生きていくことのハードルの高さに加えて、「消えた年金記録問題」のような社会問題であったり、一方で楽天・ライブドアのようなネットビジネスの起業家の成功を目の当たりにしたりと。私自身思考も発散するタイプで、将来も固まっていなかったので、ITビジネスや起業・経営を幅広く学べそうなSFCのことを知って受験して入学しました。
大学時代と起業
大学生時代では、高校でも少しだけ触れていた自転車競技の体育会に入部しました。学業面に関しては、意思決定論・交渉論の授業がとにかく面白くて、起業家の卒業生も多くビジネス実践ができる印南一路先生の研究会に所属しました。
様々な授業やグループワークへの参加を通して、ビジネスセンス(もしくは起業家精神がよいかも)とアイデアを持ち合わせているにもかかわらず、実際のプロダクトは他の人に任せたいという考え方の人が多くいることに気づきました。
この強い違和感が原動力となり、自身の卒業制作では、自らiOSアプリを開発し、リリースに成功しました。実際は、誰にもダウンロードされないという悲しい結果に至りましたが、手を動かすというのは強烈に意識していたような気がします。
同じ意図で、某スタートアップの創業期3人目ぐらいでインターンもやっていてビジネスの「触り」の部分は大学時代に沢山学ばせて頂いたと思っています。
画像①:体育会部活の仲間と
画像②:研究室時代
楽天グループに入社
相変わらず思考は発散していて、とにかく広くITビジネスが学べるところはどこかと考えて、「IT ✕ ◯◯」の「◯◯」が極端に幅広いと感じた楽天に入社しました。入社した2012年当時でも、楽天は金融もメディアもスポーツもなんでもあり、「IT」と「ビジネス」という漠然とした興味しかなかった自分が飛び込む世界としては一番面白いのではないかと思いました。
折角入社出来たので、幅広く楽天のグループに携われるところにいきたいと思い、様々なサービスを横断的に統括する「グループマーケティング部」という部署に直談判して入りました。最初は楽天モバイルの前身も前身であるMVNO事業のジョイントベンチャー立ち上げを手伝わせて頂いたのですが、イメージしていた大企業のそれとは全く異なり、「バナーづくりから経営戦略まで」何から何まで首をつっこみ、その時はとにかく地道に何もかも手を動かすことをやっていました。
新規事業の立ち上げ・経営に携わったあとは、グループ横断的なカスタマーロイヤリティマーケティングの戦略企画などに携わり、当初入社するときの目的であった、楽天というフィールドで多くの事業を学ぶということは達成出来ていたと思います。
CVCでの活動
そこで出来た社内外のネットワークや経験、楽天そのもののアセットを活用してもっとスケールを持ってキャリアを積みたいと思い、楽天キャピタルという投資部隊にジョインしました。
CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)としては、国内外のスタートアップへの戦略投資やM&A、社内起業プログラム・オープンイノベーションプログラムの運営などをやっていました。マーケティング部時代に見てきた各事業部のKPIやニーズにフィットするような戦略的な提携の方針と、投資のリターンの双方を描いていくというのは非常に難易度の高いものでしたが、グループ全体と複雑に連携をしていくという仕事は非常にエキサイティングなものでした。
より社会貢献に繋がる投資を求めて、KIIにジョイン
ベンチャーキャピタリストとしてもまだまだ駆け出しという中でしたが、より社会貢献に繋がる投資に携わりたいと考えるようになり、2021年の4月に現在メンター三田会で顧問を務められているKII代表の山岸さんと縁あって繋がり、そこからKIIに入社することになりました。KIIは慶應の資金だけでなく、1号2号ファンド合計で約150億円を様々な金融機関や事業会社などから出資を募り、運用している会社です。その意味合いで独立性が強く、ディープテック領域など含め将来の人間社会を見据えて、金銭的なリターンに加えて、より大きいインパクトを創り出していけることが魅力的でした。
私はITやマーケティングがバックグラウンドなので、ディープテック領域以外にも社会課題の解決を目指すスタートアップに投資をしています。現在私が投資実行した会社では、建設業界の労働課題の解決にチャレンジするSaaS企業や、中小企業の人手不足を解決を目指す会社などがあり、領域としては幅広く担当しています。KIIとしては健康医療領域とデジタル・テクノロジーへの投資を実行しており、2022年11月現在で45社の会社に投資しています。
画像③:株式会社慶應イノベーション・イニシアティブ
より慶應のアセットを活かした投資をしていきたい
今後は慶應のアセットを活かした投資をしていきたいと思っています。スタートアップへ投資を実行するファンドはたくさんありますが、その中でのKIIの強みとして、慶應内のネットワークの活用、アカデミアとの深い連携があると考えています。慶應の中にある知財を活用したり、経営陣に慶應の出身者がいるスタートアップをはじめ、将来的に慶應との連携が考えられるスタートアップへの投資を実行しております。
実は現在、慶應の先生と創業案件も進めています。大学の中にある知的財産等を会社として広げていくことで、より多くの人にベネフィットを届けるために拡大していけると考えています。KIIとしては、そこで投資を実行して、企業の成長によってインパクトを残しながら、結果的にファイナンシャルなリターンを得ることが出来ます。このように、私自身が楽天で得てきた経験をKIIで活かしながら、慶應の研究成果の社会実装を通して、投資のサイクルを創っていきたいと思っています。また、KIIを通じて慶應のアセットを慶應関連以外の人にも活用してもらうことで、より慶應自体に起業の機運が上がっていけばいいと思っています。
メンター三田会との出会い
KIIの社長である山岸さんがメンター三田会の顧問という形で関わっていたことと、KIIが寄付講座として提供していたSFCの「アントレプレナーシップ概論」と言う授業を支援した際に、メンター三田会の会長である宮地恵美さん、幹事の新村和大さんや飯盛崇さんに出会ったことが、メンター三田会を知ったきっかけでした。そこで経営者や起業家など様々な経験を持つ卒業生の方たちが、相互に支援しながらアントレプレナーシップを醸成していくメンター三田会のことを聞き、いち卒業生として力になれることは無いかと思い、加入することとになりました。
メンター三田会には様々な相談が来ます。それを事務局長の池田さんがマネージして、メンター三田会のネットワークに共有しています。私は普段それらの中から、自分が力になれると考えられるものについて相談させて頂き、場合によってはKIIとしての投資検討を行うこともあります。
「スタートアップ元年」にメンター三田会は何をしていくか
今、慶應内部でも「慶應からスタートアップを生み出していくエコシステムづくり」が進んでいます。慶應義塾全体として、スタートアップを生み出していこうという機運が高まっていると感じています。これは慶應だけでなく、国策として「スタートアップ元年」が標榜されるように、国全体としてのムーブメントだと考えています。
慶應という文化やネットワークといったようなアセットをどうやってレバレッジしていくのか。メンター三田会もそのように連動して温度を高めていけるプレイヤーになれたらいいなと思っています。
今はメンター三田会を知っている起業家や起業を志す人達からのコンタクトからコミュニケーションが始まっていると思いますが、メンター三田会からスタートアップ側へ声かけができる未来もあるかと思っています。これからは、そうしたアプローチを増やして、メンター三田会とメンター三田会へのコンタクトを求める方々どちらからもアクセスしやすいようになると、よりメンター三田会の良さが出るようになるのではないかと思っています。
インタビュー担当:KBC17期 渡邊光祐 KBC18期 渥美空
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