危機を救ったのはメンター三田会のネットワークだった

更新日:2021年12月2日

鈴木隆一さん

メンター三田会 事務局長




経歴

2006年慶應義塾大学理工学部応用化学科卒業、2008年同大学院卒業。現在はAISSY株式会社代表取締役、慶應義塾大学理工学研究科特任講師、メンター三田会事務局長を務める。「味博士」としてテレビ出演も多数。

より詳細なプロフィールはこちらから確認していただけます。


大学発ベンチャー、AISSY株式会社について

慶應の技術に基づき開発した「味覚センサーレオ」を使って味を客観的に分析し、データを企業に提供しています。どうしたら美味しくなるか、売れるかなどをデータをもとに考察しています。味って人間が感じれるので、味覚センサーは一見需要がないように思われるんですが、食品メーカーなど味の専門家になるにつれて味の客観性が重要になってくるんです。そこで味覚センサーレオを使った分析が食品メーカー等の顧客に価値提供ができるのです。


味覚センサーへと繋がった、ラーメン屋の再建

大学時代のサークルですね。マーケ(経済新人会マーケティング研究部)に入っていました。理工学部だったんですが、経済系にも興味があったんです。同じ理工で学生起業をされていた松本哲哉さん(現スマートニュース執行役員)が当時マーケ代表で「起業もいいな」と思い、入りました。1年生の頃は企業分析などをやっていました。

転機は2年生のときでしたね。日吉にまずいラーメン屋があったんです。それを友人数人で再建しようとしました。試食して味の議論をするんですが、なかなか交わらないんですよね。言葉にまとめることができず、伝えられないんです。この時味覚を客観的に評価することに需要があると感じました。後の味覚センサーレオに繋がったように思います。今思えば運命的ですよね。結果的には、店長と仲が悪くなってつぶれちゃったんですけど(笑)


研究をビジネスに生かすことを知った矢上時代

理工学部にいたので、もともと「技術を使って何かやりたいなー」と思っていたんですが、その時にベンチャー3社を立ち上げている中島真人教授(現名誉教授)の話を聞いたんです。最終的には大企業がそのベンチャーを買い取って中島教授は大企業の役員をされていたのですが、そこで大学の研究をビジネスにするのも面白いなと感じました。教授のご縁で慶應の技術を売る産学連携のコンサルタント会社で働き始めました。そこで技術がどのくらいで売れるのかの感覚を身に付けましたね。今思えば、ラーメン屋再建の経験と、技術コンサルの経験が起業に繋がりました。


サイエンスよりエコノミクスを優先できるかが重要

3年生の終わりで、味覚センサーの元となる研究をする鈴木孝治教授(現名誉教授)の研究室に入りました。学業のためだけではなく、教授と組んで事業化することを視野に入れて選びました。教授自身に技術移転の実績があったのです。当時シックハウス症候群を防止するために、原因物質のホルムアルデヒドの量を規制する法律が出来たんですね。そこでホルムアルデヒドを簡単に測れる機械を開発したら非常に売れました。ですが、研究室の中では簡単に生成できるし、技術的にはそこまで難しくはないんです。教授自身もおっしゃっていましたが、サイエンスのインパクトはそこまで大きくなくても、エコミクスへのインパクトが大きいこと、その2つに乖離があることをよくご存知の先生でした。大学の研究者だと、当然サイエンスが重要なのですが、事業化を考えるとエコノミクスへのインパクトも考える必要があります。


商品がなかなか完成しない時、慶應のネットワークが助けに

最初は救急医療や環境物質のセンサーなども考えていたのですが、味覚が一番需要があると思ったので、そこで起業しようと思いました。慶應の特許を使っていたので、慶應に出資してもらいました。一番大変だったのは、商品がなかなか完成しないことでした。味覚センサーのもとになる研究は研究室でやっていたんですが、教授の知り合いの食品メーカーと共同研究をしながら開発を進めていました。デバイス化するのがなかなか難しく…最初の1年は共同研究だけで売上を成り立たせていましたね。

サービスが完成しない間はヒアリングを行っていました。この時に慶應のネットワークにお世話になりましたね。メンター三田会の会員に食品メーカーの研究所長と事業部長の両方を経験された方を紹介してもらって、どこにどんなニーズがあるのかをまとめて教えてくださいました。部門ごとに攻め方が変わってくるのだと学びましたね。創業当初は企業もサービスも子どもなので、1人じゃ何もできないんですよね(笑)。そうしたレベルの低いときに手を差し伸べてくれる人を慶應で見つけることができたのはよかった。

3年目からは営業を雇ったり、広報をやったりして徐々に業績を伸ばしていきました。テレビ出演も大きい影響でしたね。ターゲットが上の世代なので、そこの目に留まるようにしています。テレビ出演でも、慶應のネットワークを活用して、例えばTBS「がっちりマンデー」の総合演出の方は塾員でした。


メンター三田会の若い世代代表として事務局長に

メンター三田会とは学生時代からお付き合いがありました。創業するとなったときに当時の森会長に誘われて、学生に近い立場ということで2008年に入会しました。その後2016年に事務局長になりました。森会長や石井良明さん(成城石井創業者)に呼ばれて、引退するに伴って若い世代を取り入れるべきだという話をうけ、事務局長を引き受けました。当時メンター三田会奨学金代表だった石井さんに「幹部は若手の起業家がやるべきだ。メンター三田会は世代交代するべきだ」と説得され、驚きましたが断れない話だと思いましたね(笑)

他の三田会は世代交代しないのを見て、メンター三田会は世代交代すべきだというのが当時の上層部の問題意識だったのです。幹部組織改革の皮切りに私が事務局長になり、その後どんどん若い人を取り入れ完全に世代交代しました。


メンター三田会では利害関係抜きに優秀な人と出会える

やってみると面白かったです。質が高い人たちと多く出会えるので、学ぶことが多いです。社会に出ると、接する人が減るんです。利害関係抜きに話せる人と多く出会えるので、やってて面白いなと思いますね。


AISSYが「美味しいを増やす」

AISSYでは食をさらに深めたいと思っています。組織規模というよりも、インパクトを大きくしたいですね。「美味しいを増やす」というAISSYのミッションの達成にむけてもっと事業を拡大したいです。


「大学が稼いでいる学生起業家を賞賛する文化を作りたい」

2020年度から理工学研究科でアントレプレナー育成講座を特任教員として担当しています。この講座ではグループワークと起業家などのゲスト講演を並行して行い、最終的には理工系の技術を用いた事業プランを慶應科学技術展で発表するという内容です。授業がキッカケで起業した塾生もいますし、外部からの資金調達をした塾生もいます。

ただ、慶應でアントレ講座はメンター三田会が特任教員を出している理工とSFCにしかないのです。全学部で起業に興味のある塾生にアントレ教育の機会を作りたいと思い、現在新しい講座として「AI起業入門」を企画しています。これは伊藤公平塾長(メンター三田会顧問)が理工学部教授時代に立ち上げられたAIC(AI高度プログラミングコンソーシアム)という組織(現代表は理工学部・矢向准教授)を利用して、①学部横断でグループワーク。医/理工/SFCの技術を経済/商/法などの知識でビジネス化を目指す全学部対象であること、②学生起業家が講師であること、③出てきた案件をメンター三田会で全力応援すること、の3点を特徴としています。卒業単位にはならないのに、11月2日時点でほぼ全学部(文・法・経済・商・医・理工・SFC・KBS・KMD・SDM)から130名もの塾生が集まってきています。これを皮切りにアントレ講座から起業が生まれる循環を作っていこうと思います。大学が活躍している学生起業家を賞賛する文化を作りたいのです。これまでは学生起業に対して、大学が評価すべきことでない、という風潮でしたが、自分で学費も稼いで払っている学生もいるし、親の世話になっていない点などもきちんと評価すべきだと思います。そうして大学が学生起業を応援できる体制を作れたら、と思います。


メンター三田会は起業を志す学生をサポートする役割にしたいです。学生の勢いと、ベテランの知恵をつなぐ架け橋にしたいです。その2つが融合し、より良いものができる手助けになればと思います。




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